漢方　亀命堂薬局　　　薬草屋　きめいどう | 日記 | タンポポの根っこが腎臓に

　昨日、腎臓の機能がよくなく、血尿も出たことがある　という方が来局しました。
　来局した方が患者ご本人かどうかは必ず確認します。本人ではないということですが偵察や冷やかし的な来局者は実は本人ということもよくあります。
　こんなことはまあどうでもいいのですが。相談ということで少し身体の状態などを聞いてみるとこれには答えず「お茶」で効くものはないかといいます。亀命堂は「漢方薬局」ですので「お茶」で病気を治そうなどとは毛頭から考えません。ましてや最重要な内臓の腎臓の問題ですから。
　お茶で腎臓に効果を期待するのは無理、きちんとした漢方療法を考えるべきことを話すと「タンポポ」が効くのでどうかと言います。
　生薬学、漢方薬学は私のライフワークで専門分野です。タンポポでは腎臓の治療は無理で的はずれである旨を話すと気を悪くしたのか、本人に聞いて見ますということで帰られました。

　おそらくインターネットの情報でも見たのでしょうが、タンポポで腎臓の治療など私の知識にはありません。タンポポは「蒲公英」といい、日本では蒲公英根という地下部を、中国では蒲公英という生薬は開花期の根をつけた「全草」、ようするに植物全体を用います。そのうえキク科のタンポポ属　Ｔａｒａｘａｃｕｍ属（植物はラテン語の学名で記憶、検索できないと生薬学は学習できません）は種が多く、東京市街地だけでも外来種のセイヨウタンポポを主として、カントウタンポポ、ヒロハタンポポ、まれにシロバナタンポポなどがあり、また、九州や関西にはカントウタンポポはなく生薬学を学んだ者にとっては腎臓に効くタンポポの起源植物はどれなんだといことにもなります。学会に発表した論文なら必ず起源植物を記載し、また本当にその植物かどうかの同定もきちんとしていなければなりません。交配雑種もありますし。

　中国の全草の蒲公英は抗菌作用、抗生物質的作用を期待して使用します。急性乳腺炎、急性虫垂炎に重要で扁桃腺炎や化膿症の治療に漢方処方に配合。日本の蒲公英根は乳汁分泌不足、胃痛、消化不良、瘡種（できもの）に民間薬（漢方医学に基づかず、経験的に単味で使用する薬草）として使用。日本の江戸時代の漢方処方である「蒲公英湯」は乳汁分泌促進の処方。
　またこの処方は最近、脳内神経伝達物質のどうこうという面白い論文が出ています。こういうのが漢方薬局の薬剤師としての知識です。
　インターネットの検索では「CiNii」などの論文検索を使いますが腎臓にタンポポは検索にひっかかりません。
　普通のgoogleで検索するとありました。東西医学融合研究会という組織がタンポポ抽出物のタンポポＴ1＝腎臓機能改善で健康食品販売をしています。会の名称で論文を検索してもなにもなく、会長（婦人科？）や副会長（眼科）の名前でもタンポポや蒲公英では論文は基礎も臨床も成分でも発表はなく、ホームページに出ている動物実験と治験だけで独自の理論の範囲をでないようです。ホームページを見ると大阪の健康食品会社がでてきますので健康食品を売るための研究会かという感じをうけます。ここらをみてかどうかタンポポ茶（タンポポＴ-1ではない）をさも効くような記載で販売する業者が多数あるようです
　インターネットホームページはもっともらしい表現で「薬草茶」の販売をするところが後を絶ちません。
　前記の来局された方にも「飲んでみたらどうですか」といえばお茶でないちゃんとした生薬のタンポポは亀命堂でも売れますが、エビデンス（根拠）の曖昧な物を販売するのは薬局、薬剤師の使命や職能に反します。
　判断能力や知識もないのに情報を鵜呑みして買いに来る方は増加しています。テレビでも「魔女たちの２２時」という番組で放送された紫根の化粧水は最悪の情報を放送したひどいものでした。多くの「だまされた」女性が紫根を買いにきました。テレビ局には厳重な抗議をしました。

　生薬ならびに生薬製品と漢方処方でしたら高度専門職である薬剤師、それも漢方薬学、医学を得意とする薬剤師に質問し、判断を仰ぐのが一番よい方法でしょう。私は効かない物や根拠のあいまいなものははっきり否定しています。