創業85年の漢方薬局です。昔からの本物の漢方薬「煎じ薬」をおすすめしています。
2012/11/20
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2012/10/24
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2012/08/27
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TOP > 漢方 亀命堂薬局 薬草屋 きめいどう 日記 > 「漢方便秘薬」 よくない名称です。
30年ほど前でしたか、「〇〇漢方便秘薬」といのが市販されたときはびっくりしました。
便秘に使用する漢方処方は主に当面の便通を目的としたもの、連用してもよい処方、便秘そのものを治していく目的のものなど、常用する処方でもかなりの種類があります。服用する患者さんの体質でも異なる処方を選択します。
それなのに多くの漢方処方を無視して堂々と「漢方」の名を冠し、なんとなく刺激の強い新薬ではない、漢方だから穏やかで安心という、患者さんに勘違いをさせる名称だろうという違和感、漢方専門の薬剤師としての抵抗感を非常に強く感じたのがびっくりしたということです。
その後に発売された「〇〇漢方胃腸薬」も同じことです。
「漢方便秘薬」の内容は「大黄甘草湯」という、下剤の大黄と緩和剤の甘草2種類の生薬で構成される処方で、2000年前の金匱要略という漢方の原典に記載さえた古い処方です。嘔吐下痢病編の「食し已(おわり)て即ち吐する者」という記載です。悪いものを食べたか、消化器に悪いものが溜まっているのを当時の治療では吐方(吐かせて治す)や下方(下剤で下して治す)で治療します。この条文は下して治そうということ。この条文は近代、江戸時代でもあまり現実的ではなく、大黄甘草湯はもっぱら便秘薬として使用されています。漢方理論で考察して便秘以外の「毒」の溜まった病気の治療にも使用しますが機会は多くありません。
便秘に使用するときは乱暴な表現なのですが、体力のある丈夫で冷えない体質の患者さんの一時的な便秘に というところでしょう。冷え症で身体の弱い患者さんでは服用すると腹痛、下痢を起こす可能性が相当高くなります。まぁ「センナ葉」のように強烈な腹痛で、冷や汗かいてのたうちまわる、しかも翌日からまた便秘で苦しむ、というほどではないですけど。
「〇〇漢方便秘薬」は丈夫な人が一時的な便秘で用いるもので、冷え性や虚弱者は要注意というつまらない便秘薬なんです。
慢性的便秘に長期に使用できる「漢方の便秘薬」のファーストチョイス(漢方医学は体質の異なる個人が対象ですから近代西洋医学のような一般的なファーストチョイスというのは変なのですが)はなんといっても「錠剤の麻子仁丸」がよいと考えています。
よい便秘薬の条件として
1.刺激性のものは刺激が適度であること。
腹痛や下痢にならない快便で出ること。
2.服用法の加減がしやすいこと。
1回1錠のものは2錠にするといきなり倍量。1回10錠服用のものなら細かく増減(減らせるんです!)調節可能。小さい錠剤一粒ならいいけど、たくさん飲むのはこわい・・・などという1粒で強く効くのと10粒飲まなきゃ効かないのとどっちが強烈で効きすぎになりやすいか穏やかで安全性が高いか理解のできない患者さんがいるのも困ったものなんです。
3.作用機序の違う薬物が配合されていること。
刺激して大腸を動かすのは必要です。刺激以外で大腸の運動を
促進し緊張を緩和する、大便中の水分を保持できることなどが重
要。
ときには腹中を温めることなど
4.長期の連用もできること
刺激の強い「センナ葉」「コーラック」などの連用では強烈な刺激に
腸が疲れて服用量の増加をまねきます。センナの長期連用で大腸
の細胞が黒くなってしまうこともあります。
などというところですが「錠剤の麻子仁丸」はこういう条件を満たした便秘薬です。
体質により「桃核承気湯」、「大黄牡丹皮湯」などがよく合う体質の方もおりますから必ずご相談ください。状態、体質をお聞きして指導します。
最後にひとつ。
何日も大便を溜め込んでから便秘薬を服用していると便秘が悪化します。便意を催さなくなったら最悪。2日目にすっきり排便くらいが限度です。毎日でもすっきりしないときは治療が必要と考えてください。