創業85年の漢方薬局です。昔からの本物の漢方薬「煎じ薬」をおすすめしています。
2012/11/20
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2012/10/24
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2012/08/27
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TOP > 漢方 亀命堂薬局 薬草屋 きめいどう 日記 > お茶でいいの? 薬じゃないしぜんぜん効かないよ。 ハトムギ茶のことです。
ハトムギはよく使われる生薬で「薏苡仁:ヨクイニン」といいます。国の定めた医薬品の公定書、日本薬局方にも収載された医薬品です。
効果は利尿、鎮痛消炎(筋肉 関節)、皮膚の角化、イボ、排膿、滋養と多彩です。特にイボには特効薬的な効果があり、これは日本で発見された効果、使用法です。また、腫瘍の治療にも用います。
そうなんだ「ハトムギ茶」はそんなに効くんだ、というのは誤解もいいとこ。間違いです。ここでは生薬の「薏苡仁」の話で、効果のまったくない「ハトムギ茶」の話ではありません。
「麦茶」のように軽く煮出すか熱湯を注げば香りのよい飲みやすく効果のない飲料のできる「はとむぎ茶」。昭和60年代でしょうか、「薬草茶」というわけのわからない効果の期待できない「薬草もどき」が出回り始めました。「はとむぎ茶」もそのころから見かけるようになったものです。手軽で飲みやすくしかも効きそうな名称ですしね。
効果のない根拠は製造時に強く加熱して焙じている、つまり焙煎しているため。有効成分は熱で破壊され効果は軽減どころかまったく効かないレベルに低下。
生薬の文献にも薏苡仁の炒ったものは健脾(簡単に言うと消化器の吸収低下)のみに用いると記載があり、伝統的にもハトムギを炒って用いるということはありません。
自分でわざわざ手間をかけて炒る人もいないでしょうし、炒ってあるのを買ってくるんですね。
ヨクイニンはハトムギ茶と違い、しっかりと煎じるものです。硬い種子ですので、ドクダミのような葉(全草といって開花期の地下部を含めた植物全体です)と違い成分の抽出に時間がかかります。弱火で30~40分は必要です。大粒の米みたいなものですから煎じた液も薄い重湯みたいなもの。ヨクイニンを米のように炊いて食べる人もいます。
また、ハトムギ茶の効かない理由のひとつに用量があります。写真の一番右のが効かないハトムギ茶ですが、ティーパックの中身は5gしかありません。一般的に15~30g程度は必要で、中国では90gくらい使うこともあります。炒って成分を壊したうえ、量が少なくてはもうどうにもなりません。日本の漢方処方に配合するときは標準的には10gくらいですね。
さあ、もう分かりましたね。イボや皮膚の乾燥(炎症が強いときはヨクイニン単独では無理)にはお茶じゃなくきちんとしたヨクイニンを使用しましょう。利尿にもヨクイニンならよい効果があります。
もうひとつ重要なこと。
ヨクイニンはエキス剤を作ることが難しい生薬です。医薬品の顆粒や錠剤のヨクイニン製品がほとんどないのは製造技術の問題で、原料が安くて大量にあるのにもかかわらず製品が少ないのはこれが理由です。水溶性でなく、油状物質であってアセトンなどでないと溶けない有効成分があるために通常の方法ではよい製品ができないようです。水で煎じたヨクイニンを飲むときは水溶液でなく、水中に分散した油状成分を服用していると考えられます。
生薬の成分は水溶性でないものも多く、実際は固体成分が水の中に分散した懸濁液を服用しているのが多いんです。ついでに、油状成分が水の中に均一に分散しているのが牛乳のような乳濁液。クリームなどは逆に油の中に水が分散したのもあります。
写真は左から日本薬局方ヨクイニン(白様:しろでといいます)、甘皮(種皮)の付いたヨクイニン、外殻(総苞)のついたままの「鳩麦」、焙煎したハトムギ茶。
左の3種類は効きます。ただし「鳩麦」は無駄な部分も多いうえ、外殻を砕かないと煎じても成分の抽出が少なく、効果は落ちます。亀命堂薬局の漢方の流派、古方派では左から2番目の甘皮の付いたヨクイニンを賞用します。日本薬局方に収載されたとき、厚生省の役人が規定したのが白いヨクイニンなんです。一番右のハトムギ茶は薬としての価値はありません。嗜好品のお茶です